2020年7月27日月曜日

S_nao NOTE  ジェンダー論

『テレビ番組から考える日本のジェンダー論と現代社会』

 

日本のLGBTに対する考え方は他の国と比べてどうだろうか。またそのことによってどのような影響を経済にもたらすのか。私は日本のジェンダー、特に同性愛者への差別の目が少なくないと考える。それが特に表面化されるのはテレビ番組においてだ。

日本のテレビ番組には多くの同性愛者、いわゆる「オネエタレント」が出演している。昨今では「オネエタレントブーム」と言われその人たちをフォーカスした企画や特別番組が放映されている。この現状について私は様々な性向を持っていても社会に認められていることを表していると考え、良いものだと考える。しかしその番組での描写に少し違和感を感じる。例えばその番組での企画ではタレントたちが体を張る、派手な格好をする、また男性に強くアプローチをする、そのタレントの特徴的な仕草や口調を少し侮蔑の意もこめて模倣し、それを笑いにするなどの過激な描写を含むものがある。ここに今の日本の同性愛者への観念、「笑いの対象」というものが現れていると同時に同性愛者の存在またその固定概念を押し付けている。

ここで日本と比較すると差別の目が少ないアメリカの番組と比較する。アメリカでも多くの同性愛者がタレントとして活動し、テレビ・ネット番組に出演している。しかし日本のものとは少し趣が異なるものが多くある。その中で私が特に印象深かったのは、インターネット定額動画配信サービスNetflixで配信されている「クイア・アイ 外見も内面もステキに改造」で同性愛者の5人組が一般人を美容、料理、インテリア、ファッション、スピリチュアルの方面からプロデュースするという番組だ。現地でも高く評価されており、2018年のエミー賞の作品賞、キャスティング賞、編集賞の3つを受賞している。この番組の出演者への描写の特徴の一つは「ゲイ」と一括りにするのではなく、それぞれの性格、魅力にフォーカスしていることであり、ゲイ5人が集まっているという事実はあるが、それに対して「ゲイとはどういう存在である」という概念を作るのではなくそれぞれ特徴の異なる「人」として取り上げている。

日本でも「オネエタレント」はそれぞれ個性が異なるし、「人」として取り上げているという意見もあるかもしれないが、やはり日本では「過激なことをする=オネエタレント」という概念の押し付けがあり、その人たちもそれにハマって活動せざるを得ないのが現状である。また性別適合手術を受け、男性から女性になった文豪家の能町みね子さんは自身が出演したバラエティー番組で「オネエタレント」として紹介されたことをSNS上で抗議したことがある。彼女曰く「オネエ」という言葉は、主にトランスジェンダーやゲイ、女性のような格好をする男性らの俗称、ゲイの誇張した女性言葉やしなを作った振る舞いを指して使われてきたが、「今は人種や属性のように扱われ、オネエ言葉を使っていないゲイや女性として生きている人にまで使われている。」と述べ、タレントのはるな愛さんは「残念ながら現在の日本のテレビ業界では、面白い扱いや辛口のコメントといった立ち位置ばかり求められているが、本来はもっと多様であるべきだ。」と述べている。このことからも日本のテレビ番組が誤ったLGBT論、固定概念を押し付け出演しているタレントの「個」を潰してしまっている。また先述した「クイアアイ 〜」に出演しているタレントの口調は人それぞれであるのにも関わらず日本語吹き替え版ではいわゆる「オネエ口調」でアフレコされているところにも日本のテレビ番組が与えるオネエの固定概念が存在していることを顕著に表している。

  日本の多くの人が見、影響力が大きいこのようなテレビ番組でこのような現状があるため日本では差別の目が少なくないと考える。ではこのことが原因でどのようなことが起こりうるのか。201511月、厚生労働省所属の研究機関である国立社会保障・人口問題研究所や大学の研究所などによる研究グループの発表によると、「身近な人が同性愛者だった場合」では、「嫌だ」という回答は、対象が「近所の人」なら39%、「同僚」なら42%、「自分の子ども」では72%という結果がで、「職場の同僚が同性愛者だった場合」について、40代男性管理職では「嫌だ」と答えた人が7割を超えた。また大阪繁華街での若者男女に対する調査では同性愛者が原因でいじめを経験するリスクが高く(Hidaka Y et al (2008) Attempted suicide and associated risk factors among youth in urban Japan, Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology,43:752-757)、日本人ゲイ・バイセクシャル男性5,731人を対象にした調査では60%以上の人が自殺を考えたことがあり、約15%の人が自殺未遂をしたことがある(厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業 ゲイ・バイセクシュアル男性の健康レポート2)という結果が出ている。このように日本では同性愛者が社会的排除と孤立感を感じ、またその感情が原因で生きづらさを感じ、自殺を考える人も少なくない。このことが原因で同性愛者をターゲットにした襲撃、殺害事件が起きてしまっているのも事実である。

またLGBTの観点だけでなく、私は日本の多様性の欠如を感じ、特にそのように感じたのは昨年の夏にアメリカのディズニーランドを訪れた時である。日本のディズニーランドを訪れる人々は同じような服装で同じようなカチューシャなどをつけ、ファミリー、学生、男女カップルが多く訪れるが、アメリカではそれぞれの趣向をファッションに表してそれぞれが異なった装飾でディズニーランドを楽しんでおり、ファミリー、学生、男女カップルだけでなく高齢者、同性カップル、障害者などの人々も訪れていた。またどのアトラクションの待ち時間も一定でそれぞれがしっかりとした「好み」を持っていることが分かる。このディズニーランドの現状はそれぞれの国の「多様性」が現れており、「様々な考えを表現する、またそれを受け入れる」という日本の課題も分かる。日本がジェンダーに限らずそれぞれが「個」を表現でき、それを受け入れられる国になれば、より魅力的な国になると考える。今年開催される東京オリンピック・パラリンピックで多くの国や地域の人が訪れることが契機で様々な考えを持っている人との関わりが増え、少しでも「多様性に溢れた国」に近づくことを願う。

                                    (2515字)

 

引用文献

 

毎日新聞(2016)「毎日ジャーナル」『Listening オネエ呼ばわり 「不快」 テレビ番組、差別助長の恐れ』<https://mainichi.jp/articles/20160516/org/00m/010/008000c(最終閲覧日2020113)

 

永易至文(2016)nippon.com」『日本における性的マイノリティーの受難』<https://www.nippon.com/ja/currents/d00253/#>(最終閲覧日2020113日)

 

公益財団法人東京都人権啓発センター(2015)「TOKYO人権第57(平成25228日発行)」『性的少数者の自殺リスク その背後にある「生きづらさ」とは』<https://www.tokyo-jinken.or.jp/publication/tj_57_feature.html>(最終閲覧日2020114日)

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